労働基準監督署の勧告に不服申し立てはできない
労働基準監督署の是正勧告の怖いところは、その勧告に不服がある場合でも、その内容を撤回・変更させるために異議を申し立てることができないことがあります。
これは労働基準監督署の是正勧告が、行政指導だからです。相手に何らかの義務を負わせる行政処分であれば、処分を行った機関への異議申し立てや上級庁への審査請求等、不服を申し立てる制度がありますが、法的拘束力のない行政指導にはそのような仕組みはありません。「不服であれば従わなければ良い」という理屈なのです。
しかし、現実的には、是正勧告を受ければ、ある程度従わなければならないことになり、反論の余地は限られています。もちろん、是正勧告ののちに刑事・民事の訴訟となった時に、法廷等で行政の見解を否定することはできますが、誰しもそのような事態に至ることを望まないでしょう。
つまり、臨検など、労働基準監督署による調査時に、どれだけ自社の主張を通せるかが重要になってきます。労働基準監督官の質問の法的な意味を理解していなかったり、調査を早く終えたい一心ですべき主張を全くしなかったり、あるいは過度に敵対的な態度をとったりすれば、受けなくても済んだ是正勧告を受けてしまう可能性もあるのです。