ある日突然、請求が届く
ある中小企業の話です。社長さんが朝、いつものように出社すると、机の上に弁護士を差出人とする内容証明郵便が一通置かれています。軽い胸騒ぎを覚えながら封を切り、読んでみるとこうあります。
「貴社は私に対して、○年○月○日から○年○月○日までの時間外労働の割増賃金の全額を支払っていません。よって、本書面到達後10日以内に、○万円を下記口座にお振込みください」
ギョッとする内容に目を疑う社長。「お支払いいただけない場合は、やむなく法的措置を...」との穏やかではない文面がさらに不安を煽ります。
弁護士は1年前に退職した元社員の代理人です。その元社員とは退職時に特に揉め事があったわけでもなく、在職中も黙々と仕事をするタイプ。待遇について不平不満を言う様子も全くありませんでした。
実は近年、このようなケースは増えています。社長のもとに届いたのは、「残業代請求」や「割増賃金請求」と言われるもので、法律上支払われるべき賃金が支払われていないとの主張でなされるものです。元従業員が労働基準監督署へ通告したり、泥沼の訴訟に発展したりすることも珍しくありません。
この会社は、何故このような請求を受けることになってしまったのでしょうか。そして実際に請求を受けた場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。
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