残業代請求はなぜ増えているか① 行政の動き
厚生労働省が集計・公表した、平成23年度の残業に対する割増賃金の不払いへの是正指導に関する集計を見てみましょう。
それによると、全国の労働基準監督署が、同年度に割増賃金の不払いについて是正指導を行った企業は全国で1312社。労働者11万7002人に対して、145億9957万円が支払われたそうです。支払われた割増賃金の平均額は1社あたり1113万円、労働者1人あたり12万円となっています。
厚労省は平成15年に「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」を策定するなど、近年割増賃金の不払い問題に対する取り組みを強化しています。そして「サービス残業」という言葉がメディアなどで盛んに取り上げられたこともあり、この問題は広く周知されています。
冒頭の統計は、あくまで労基署に持ち込まれた事案が集計されたものです。実際に全国の企業に労働者から請求された金額、そして労働者に支払われた金額は、より多額になることは想像に難くありません。
今まで、労働者との法的な紛争には無縁であった会社であっても、残業代請求は決して「対岸の火事」とはいえません。残業代請求が、企業経営において明確なリスクとして顕在化している状況を認識する必要があるでしょう。
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