労働基準法上の諸条件を確認する
それ以外にも、残業代請求がなされた場合に確認しておいたほうが良いポイントがいくつかあります。
例えば基準賃金の計算方法です。いわゆる基本給の他の家族手当や通勤手当、住宅手当などが基準賃金に含まれていないでしょうか。また割増賃金の割増率の算定は正確でしょうか。時間外労働と休日労働が重複されて計算されていないかもチェックしましょう。
変形労働時間制や、裁量労働制によるみなし労働時間に関する規定も、時間外労働の有無を調べる際には非常に重要です。労使協定や就業規則を再度確認し、請求を行っている労働者の勤務形態について確認しておく必要があります。
また、時間外労働等の対象外となる管理監督者や機密事務取扱者、監視労働・断続的労働についても同様です。これらは請求の前提として、協定等はあるものの実質的にそれに当たらないとの主張で残業代請求がなされている可能性もあります。この部分に見解の相違がある場合は大きな紛争になりやすいと言えます。
請求を受け取ってから、紛争解決までの過程をこれから説明していきますが、いずれの手段よるにしても、相手方の主張を把握し、それに対する使用者としての主張を書類による証拠により整えておくことが最も重要なことなのです。
労働基準法上の諸条件を確認する関連ページ
- ある日突然、請求が届く
- 残業代請求はなぜ増えているか① 行政の動き
- 残業代請求はなぜ増えているか② 弁護士の動き
- 残業代請求は辞めたあとの社員から来ることが多い
- 残業代請求リスクを減らすには
- 労働基準法が全てを決める!
- 労働基準法の対象は「労働者」
- まずは法定労働時間を知っておこう
- 時間外労働・休日労働には条件がある
- 残業をさせるには「36協定」が必要
- 割増賃金とは① 時間外労働
- 割増賃金とは② 休日労働
- 割増賃金とは③ 深夜労働
- 時間外労働が月60時間超えると割増賃金は倍増
- 割増賃金は重複して適用されるのか?
- 基準賃金からの割増で残業代が決まる
- 変形労働時間制とは?
- 1ヶ月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
- フレックスタイム制の導入は慎重に
- 業種が限られる「専門業種型裁量労働時間制」
- 外回りの営業等には「みなし労働時間制」が有効
- ホワイトカラー向け「企画業務型裁量労働制」
- 管理職には残業代を払わなくて良いのか?
- 「名ばかり管理職」問題から見えてくるもの
- 機密事務取扱者とは?
- 監視労働・断続的労働とは
- この時間は労働時間? ①休憩時間・手待時間
- この時間は労働時間?② 通勤時間・出張の移動時間
- この時間は労働時間? ③持ち帰り残業
- 内容証明が届いても慌てないこと
- 残業代請求の内容証明には何が書いてあるか
- 残業代請求の内訳を精査する
- 未払残業代の利息・遅延損害金について
- 未払残業代の時効は3年
- 時間外労働を計算する
- タイムカードはどの程度有効か?
- 当事者同士の交渉による解決
- 労働基準監督署のあっせん
- 労働審判とは
- 残業代請求で、弁護士にできること